自然素材の家とは、一般に化学物質や化学建材を使わない住宅をいいます。家の建材や施工の過程で使われる接着剤などの化学物質がシックハウス症候群などを起こしたことが一時期問題になりました。以来、家族が健康に暮らすため、体を害する心配のない自然素材でつくる家への関心が高まっています。
自然素材と聞いてすぐに思い浮かぶのが木材、とくに自然の木を伐ったままの、加工をしていない無垢材です。日本の建築物は古来より木材でつくられてきました。世界遺産になるような寺社も、ふつうの人が暮らす民家も、建材といえば木です。島国の日本で建築をする際に、いちばん入手しやすかったのが周りの森で育まれた木材だったからでしょう。
木材の他にも、住宅に使われる自然素材には、壁材や天井材に使う漆喰や珪藻土、障子や襖に使う和紙、薪ストーブの炉壁や庭石などにする天然石、断熱材に用いるセルロースファイバーやウールなどが挙げられます。こうした素材は、優れた特徴を備える一方で、事前に知っておきたいこと、建築後の注意点があります。この特集では、自然素材のなかでも木材に絞って話を進めましょう。
天然の木材のメリットは、まず健康に過ごせることです。わが家では大切な家族が一日の多くの時間を過ごします。健康を害するリスクをなくし、またアレルギーを軽減するため、無垢材を使うのはとても理に適った選択です。
木材は優れた機能も備えます。調湿性はその一つ。周囲の湿度が高い時には湿気を取り込み、低いときには湿気を放出してくれます。断熱性も金属やコンクリートに比べて高く、快適な住まいづくりに適します。また、その蓄熱性は木にぬくもりを感じる理由にもなっていますし、さらに消臭性や難燃性も実証されています。
木のやさしい手触り、足触り、香り、工業製品にない個性に魅力を感じる人も多いでしょう。つまり、私たちの五感に訴える素材なのです。
経年変化も木の家の大きな喜びです。世の中には時と共に劣化するものが多いなか、木は時間が経つにつれ味わいを増し、それゆえ愛着も増す数少ない存在です。
木は生長する過程で二酸化炭素を吸収し、酸素を排出します。家づくりに木を使うことで、木材の中に固定された二酸化炭素を長期間とどめおくことができます。また、適切に木を伐った後に、適切に木を植え育てることで、森のサイクルが保たれます。木を使うと地球温暖化防止にも役立てるのです。
木の家の良さは分かる人も、いちばんの障壁となるのがコストかもしれません。人工的な素材と比較して材料費も建築費も高くなる傾向にあります。経年美化が楽しみな反面、無垢材は傷がつきやすく、ひび割れ、隙間、反りなどが生じることがあります。定期的なお手入れが必要なことも知っておきましょう。
最後に、木の家を建てるには、木のことをよく知り、木を扱う技に長け、木の良さを最大限引き出してくれる住宅会社に相談することが大切です。